更新日:2022年10月27日
事業者が消費税を納付する際、
「売上税額(200万円)」-「仕入税額(150万円)」=「消費税額(50万円)」
という計算を行います。「仕入税額(150万円)」を「仕入税額控除」といいます。
この仕入税額控除ですが、経費であればとにかく適用されるというものではなく、ある一定のルールを守ることで「仕入税額(150万円)」を適用することが出来ます。逆に言うと、ルールを守っていない場合は「仕入税額(150万円)」が認められず、消費税額は200万円となってしまいます。
そのルールというのが、「帳簿や請求書などを保存する事」でした。
この保存するべき帳簿や請求書が2023年10月から「適格請求書(インボイス)」というものに変わります。
このことをインボイス制度といいます。
インボイス制度が始まると、インボイスを保存していないと仕入税額控除ができなくなります。
仕入先からの請求書などがインボイスでなかった場合、その金額の仕入税額控除はできません。
自分がお客さんに渡す請求書などがインボイスでなかった場合、お客さんはその金額の仕入税額控除はできません。
インボイス発行事業者になるには登録が必要です。
インボイス発行事業者は必ず課税事業者になります。
インボイスの様式は定められておりません。
次の必要事項が記載されていれば、「請求書」や「領収書」といった名称を問いません。また、必要事項の記載は手書きも認められます。
要件
インボイス発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
取引年月日
取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
税率ごとに区分して合計した対価の額及び適用税率
税率ごとに区分した消費税額等
書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
要件の中の紫色の部分が、現行制度に追加で記載が必要になる事項です。
インボイスである要件に「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称を記載すること」とありますが、不特定多数のお客さんに対して販売等を行う小売業・飲食店業・タクシー業などの取引については、記載内容を簡易なものにした「適格回位請求書(簡易インボイス)」を交付することが出来ます。
インボイス発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
取引年月日
取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
税率ごとに区分して合計した対価の額
税率ごとに区分した消費税額等
次の取引の場合は、インボイスの交付義務が免除されます。買手側は帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。
3万円未満の公共交通機関による旅客の運送(航空機を除く)
卸売市場において行われる生鮮食料品の委託販売
農協や漁協に委託して行われる農林水産物の販売
3万円未満の自動販売機などでの販売
郵便切手による郵便サービス(郵便ポストに投函されるものに限る)
登録は義務ではありません。登録した場合としなかった場合を比べて、自分の場合はどうすると良いのか考えてみましょう。
インボイス発行事業者となる(依然として課税事業者である)。
相手からの義務に応じてインボイスを交付する義務が生じる。
相手が課税事業者であった場合、相手は発行したインボイス分の消費税額を仕入控除ができる。
インボイス発行事業者として国税庁ホームページで公開される。
インボイス発行事業者とならない(ただし、基準期間の売上金額が1000万円を越えていると課税事業者のままである)。
インボイス制度により相手は仕入税額控除ができない。
ただし、経過措置が設けられている。
※制度開始後6年間は、免税事業者などのインボイス発行事業者以外からの課税仕入れであっても仕入税額の一定割合(80%または50%)を仕入控除できます。
インボイス発行事業者になると、課税売上高が1000万円以下でも課税事業者となります。
登録を受けた日から課税事業者となります。
インボイス発行事業者となる(課税事業者になる)。
相手からの義務に応じてインボイスを交付する義務が生じる。
相手が課税事業者であった場合、相手は発行したインボイス分の消費税額を仕入控除ができる。
インボイス発行事業者として国税庁ホームページで公開される。
インボイス発行事業者とならない(基準期間の売上金額が1000万円を越えていなければ、依然として免税事業者のままである)。
インボイス制度により相手は仕入税額控除ができない。
ただし、経過措置が設けられている。
※制度開始後6年間は、免税事業者などのインボイス発行事業者以外からの課税仕入れであっても仕入税額の一定割合(80%または50%)を仕入控除できます。
※免税事業者の売上先のほとんどが次の人々である場合、インボイスが関係ないため、取引への影響は生じないと考えられます。
①売上先が消費者または免税事業者である。
②売上先の事業者が簡易課税制度を適用している。
登録するかどうかは各々の自由です。必ずしも登録しなければならないというわけではありません。
自分は登録した方が良いのかどうか、インボイス制度への事前準備の基本項目チェックシート(国税庁ホームページ)で確認してみましょう。
登録申請書を税務署に提出しましょう。e-Taxと書面の2パターンの提出方法があります。
登録申請は令和3年10月1日から受付を開始しています。
2023年3月31日までに提出すると、インボイス制度が始まる2023年10月に間に合います。
申請してすぐに登録されるわけではありません。早めの行動が吉。
※令和4年9月21日時点では、申請書の提出から登録通知までの期間は次の通りとなっています。
e-Tax提出の場合 約2週間
書面提出の場合 約1か月
現在すでに課税事業者であっても、自動的に登録されるわけではないのでご注意ください。
現在使用しているレジがインボイスに対応するかどうかメーカーにお問い合わせください。
インボイスの記載必要事項は手書きでも認められます。
書類の量が少なければ判子を作成しての対応も可能です。
また、この機会にレジを新しくしたいと考えているのであれば、IT導入補助金2022 と小規模事業者持続化補助金を利用できる可能性があります。
※補助金を利用する場合、補助金が決定するまでレジを購入することはできません。
簡易課税を選択していると、消費税額の計算のときには「売上の消費税額 × みなし仕入率」を使うのでインボイスが不要になります。仕入先がインボイス発行事業者であるかどうかは関係ありません。
登録しなかった場合、自分にインボイスの影響はありませんが、売上先はインボイスによる仕入税額控除ができないということになります(経過措置期間は仕入税額の一部を控除できます)。
ただし、売上先のほとんどが次の人々である場合、インボイスが関係ないため、取引への影響は生じないと考えられます。
①売上先が消費者または免税事業者である。
②売上先の事業者が簡易課税制度を適用している。
登録は義務ではありません。登録した場合としなかった場合を比べて、自分の場合はどうすると良いのか考えてみましょう。
インボイス制度の実施を契機として以下の内容を実施すると、独占禁止法や下請法に違反するおそれがあります。
「自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えること」は優越的地位の乱用として、独占禁止法上の問題となる可能性があります。
取引対価の引下げ
商品・役務の成果物の受領拒否
協賛金等の負担の要請など
購入・利用強制
取引の停止
登録事業者になるよう強く勧めるなど
※登録要請を行うこと自体は独占禁止法上の問題にはなりませんが、課税事業にならないのなら取引価格を引き下げるとか取引を打ち切るといったことを一方的に通告すると、独占禁止法上の問題となります。